【17】返品列の終わらない声
第一章:予言が外れた朝
2025年4月30日、千葉県館山市。空は妙に晴れ渡り、春の陽射しが地面に長い影を落としていた。
「今日、来るって言ってたのに…」
防災予言系のSNSインフルエンサーが「今日午後3時に南関東で震度7の大地震が来る」と断言してからというもの、町は一時騒然となり、ホームセンターには人々が殺到。水、非常食、懐中電灯、ポータブルトイレ…棚は空になった。
しかし――
午後3時を過ぎても、風ひとつ吹かなかった。
その翌日、ホームセンター『ツチヤマDo館 山荘店』は異様な混雑に見舞われた。返品希望者の長蛇の列。みな口々に文句を言い、レシートを握りしめていた。
第二章:多々梨、列に並ぶ
「大丈夫っしょ…」
渡辺多々梨は、列の最後尾で肩をすくめた。黒いワンピースの上に着たオレンジのベストが陽光に照らされ、微かに反射していた。彼女の足元には、先日買ったばかりの災害用寝袋と固形燃料の袋が転がっている。
「でも、なんか…変なんだよな」
列は進まない。レジは5台稼働しているが、返金手続きがなぜか極端に遅い。スタッフは無言で、時折レジ横の端末を何度も再起動していた。
さらに奇妙なのは、返品客が次々と、ある部屋に連れていかれることだった。「返品理由の確認」と言われたが、入っていった人々が再び列に戻ってくることはなかった。
第三章:消える人々
「…なんで誰も戻ってこないの?」
多々梨は不安を覚え、前の男に小声で話しかけた。すると男は、疲れ切った目で振り返った。
「…あんた、知らないの? 一回あの部屋入ると、終わりなんだよ」
「え?」
「さっきの女の人、返品で揉めてたら急に連れてかれてさ。次の人も。みんな、いなくなる」
多々梨は喉が乾くのを感じた。部屋の入口には、「返品センター」と書かれた簡素なプレート。だが中は見えない。扉は一度閉まると、何かを遮断するように重く沈んだ音を立てて閉まる。
第四章:返品センターの中へ
やがて彼女の番が来た。
「こちらへどうぞ」
無表情な店員に案内され、多々梨は例の部屋の中へ入った。中は意外にも殺風景な会議室風だった。長机と椅子が並び、モニターが壁に掛かっている。

「返品理由をお願いします」
「……大丈夫っしょ。使ってないから」
「では、こちらの映像をご覧ください」
モニターが突然点灯し、防災用品を買う多々梨の姿が流れ出した。続けて映ったのは、彼女の部屋。備蓄品を確認しながら、何かをメモしている姿。
「……いつ撮ったのこれ?」
映像はさらに進み――ベッドの下で何かをこっそり隠している様子。
「これは防災用品ではありませんね。規定違反です」
「は? いや、ちょっと待って!」
「返品対象外です。追加処理を行います」
第五章:レジ奥の暗黒処理室
ドアが自動で開いた。中は暗く、空気がひんやりとしていた。
「もぅダメじゃんッ!」
叫ぶ間もなく、彼女は暗闇へと押し込まれた。周囲には段ボールが山のように積まれ、その間に、人間のような影が動いている。
誰かが言った。
「ここで働け。買った分だけ、働いて償え」
防災用品の返品が多すぎて、業務が回らない――その負担を「返品者に課す」秘密のシステム。それが『返品センター』の正体だったのだ。
最終章:出口なきループ
それから三日後、多々梨の知人がホームセンターに来たが、彼女の姿を見かけることはなかった。レシートを握る客が今日も列を作り、ひとり、またひとりと『返品センター』へ消えていく。
だが、戻ってくる者は――やはりいなかった。
― 完 ―
生成メモ
怖あい話GPT2025を使用して生成、プロンプトは『大地震の予言が外れたことで防災用品の返品でホームセンターが修羅場と化す』