【22】現物支給のパスタ屋

第一章:求人広告の罠

春の終わり、渡辺多々梨はいつものようにスマホでアルバイトの求人を眺めていた。
館山市内にある商業施設の掲示板に、小さな紙切れが貼られていたのを思い出し、それを見直す。そこにはこう書かれていた。

「調理補助スタッフ募集!未経験歓迎、まかないアリ。給与:応相談」

まかないアリって、パスタとか食べ放題だったら神じゃん!」
そう思ってその日のうちに電話をかけ、翌日には面接、そして週末からの勤務が決まった。

第二章:入り口の違和感

初出勤の日。
多々梨はいつものように黒いワンピースにオレンジのベスト、そして緑の靴紐のスニーカーを履いてその店「トラットリア・ルナ・マーレ」に向かった。

海沿いの住宅街の外れにあるその店は、Googleマップでは「閉業」となっていた。しかし実際には店の明かりがぼんやりと灯り、古びた木製の看板には「営業中」の札がかかっていた。

扉を開けると、ガーリックとオリーブオイルの匂いが鼻をついた。だが、奥の厨房から誰も出てこない。

「……すみません、今日からバイトの……渡辺ですけど」

誰も返事をしない。ただ、厨房の奥から**カタ……カタ……**と、包丁がまな板を叩く微かな音が聞こえてきた。

第三章:パスタだけの世界

やがて、厨房から小柄な初老の男が現れた。顔色は悪く、声は異様に低い。

「君が新しい子か。……大丈夫っしょ、できるよな?」

口癖を返されて、多々梨は妙な胸騒ぎを感じたが、笑って頷いた。

仕事は簡単だった。茹でられたパスタを湯切りし、皿に盛り付けるだけ。しかし、奇妙だったのはパスタしか存在しないことだった。トマトソースも、ペペロンチーノも、カルボナーラも――すべて麺だけだった。

「ソースは?」

「必要ない。純粋な味を楽しむんだ」

そう言われ、黙々と麺を盛る。気づけば夜も更け、店に客が一人も来なかったことに多々梨は疑問を抱いた。

「今日は給料、現物でいいか?」

店主はそう言って、冷蔵庫から真空パックされた乾燥パスタの束を取り出した。それを両手で多々梨に差し出す。

「……これだけ?」

「市場価格では5000円分だ。十分だろう?」

多々梨は笑いながら「大丈夫っしょ……」と呟いたが、内心では“ありえない”と感じていた。

第四章:食えぬ現物

翌朝、多々梨はそのパスタを茹でて食べようとした。しかし、湯の中でパスタが溶けなかった。
沸騰しても、麺は硬いままだった。それどころか、鍋の中で麺同士が動いていた

「……もぅダメじゃんッ!」

あわてて鍋ごと流しに投げ出す。すると、底の方にあった一本の麺が、まるで指のように曲がりながらシンクの縁を登ろうとしていた。

その夜、再び「トラットリア・ルナ・マーレ」へ向かったが、店は跡形もなく消えていた。木の看板も、建物も、土台すらも――何もない更地だけが残されていた。

多々梨の手にはまだ、あの現物支給のパスタが残っていた。それは袋の中でゆっくりと、蠢いていた

― 完 ―

生成メモ

怖あい話GPT2025を使用して生成、プロンプトは『バイト代がパスタで現物支給されてしまった恐怖体験』

バイト中の服装が多々梨仕様なの面白い。