【4】追いかけるチーズケーキ
【冒頭】
「……チーズケーキ、走るってどういう意味よ……?」
渡辺多々梨は、スマホに表示された奇妙なレビューを見てつぶやいた。
「口に入れる前に逃げられました!星1です!」
そのコメントの下に並ぶのは、「脚が速すぎる」「追いつけなかった」「冷蔵庫から出た瞬間に逃げた」といった、信じがたい内容ばかり。
「まあ、ネタでしょ、ネタ。うん……大丈夫っしょ」
そう自分に言い聞かせながら、彼女はその問題の店、「La Fromage Noire(ラ・フロマージュ・ノワール)」へと向かった。場所は郊外の寂れた商店街の裏路地。営業は深夜のみ。店のドアには小さく、
「命がけで、お召し上がりください」
と書かれていた。
「……こわ。けど、ここまで来たしな」
入店すると、中は異様に静かだった。オペラのようなクラシックがかすかに流れ、カウンターの奥にあるショーケースには、ただひとつだけ——黄金色に輝くチーズケーキが置かれていた。
「ご注文は?」
老女のような声。誰の姿も見えない。
「……その、チーズケーキで」
「では……お祈りを」

その瞬間、ショーケースがパキン!と音を立てて割れ、チーズケーキが飛び出した。
タッタッタッタッ!
まるで犬のように、いや、それ以上の速度で床を駆け抜けていくチーズケーキ。
「うわっ、速っ!ちょ、ちょ待って、チーズケーキ!!」
多々梨は反射的に追いかけた。
【クライマックス】
細い路地を駆け抜け、チーズケーキは鉄柵を越えて旧倉庫街の暗がりへと消えた。多々梨は息を切らしながらその跡を追う。
そこは、焼け焦げた菓子の匂いが漂う、廃墟のような洋菓子工場跡だった。
「……ここ、なに?」
中に入った瞬間、照明が一斉に点いた。電源が生きているとは思えなかったのに——。
足元に何かが走る。チーズケーキ……だけではない。
ショートケーキ、タルト、ミルフィーユ、ティラミス——
すべて「脚が生えて」いた。

どれもこれも、異様に艶のある目玉を持ち、ケーキとは思えぬ脚力で駆け回っている。そしてその中央に立つ、ひときわ巨大な——
「……モンブラン……?」
人間の首ほどの大きさのモンブランが、多々梨を見つめていた。その栗の山の中から、何かがピクリと動く。
「——よく来たな、“次の生地”よ」
そう囁かれた瞬間、後ろから両脚を何かに押さえつけられた。さっきのチーズケーキだった。その体表には、無数の爪のような器官が蠢いている。
「ま、まって! チーズケーキのくせに、なんでこんな……っ」
「お前が“捕食される番”だ。甘く……ゆっくり……焼き上げてやる」
そこから先、多々梨の記憶は断片的だ。高温、甘い香り、焼かれる音。そして、自分の体が「型」に押し込まれる感覚。
翌朝、店のショーケースには、ひとつのチーズケーキが静かに並んでいた。
その断面には、彼女のネックレスが埋まっていた。
生成メモ
怖あい話GPT2025を使用して生成、プロンプトは『脚が速いチーズケーキ』