【2】ふたりきりの訪問者
1. 【始まり】

梅雨の終わり、じめじめとした空気が館山市を包んでいた。
渡辺多々梨は、小さな山あいの集落に向かっていた。そこには「訪問者に優しすぎる村」としてネットで噂されている集落があった。泊まった人々が「もう一人の自分を見た」と語り、帰ってから人格が変わったという話もあった。
「なんかさぁ、"やさしい村"って…逆にヤバい匂いするっしょ」
そう呟きながら、多々梨はグレーのソールの黒いスニーカーでぬかるんだ道を進む。オレンジのベストの下のワンピースは、すでに湿気で重たくなっていた。
2. 【村の歓迎】
夕方、彼女は村にたどり着いた。石畳の道、くすんだ瓦屋根、すべてが古く、時間が止まっているようだった。老人たちは笑顔で出迎え、彼女を空き家へと案内した。
「この村はね、訪ねてくる人を大事にするんだよ。ひとりにはさせないからねぇ…」
「えっ、まぁありがとっす。でもひとり旅が好きで…」
「……ひとりにはさせないからねぇ」
同じ言葉を繰り返す老婆の目は笑っておらず、どこか乾いていた。
3. 【夜の足音】
その夜、多々梨は異変に気づいた。部屋の外、砂利を踏む足音が、止まない。
ジャリ…ジャリ…ジャリ…
「え、誰か通ってんの…?」
窓を開けて見るも、誰の姿もない。だが、耳元で囁く声がした。
「ひとりには…させないよ……」
慌てて振り返ったが、そこには誰もいなかった。ただ、鏡の中に、もうひとりの多々梨が立っていた。
4. 【もうひとり】

翌朝、村の住人たちは無言で彼女を囲んでいた。そして言った。
「あなたはこの村で“ふたり”になったの。どちらかが残って、どちらかが帰るのよ」
多々梨はパニックになり、家を飛び出した。しかし道という道には、村人たちのように笑う“自分”が立っていた。
ひとりは首から十字架を下げていた。
もうひとりはそれを持っていなかった。
「どっちが本物か、わかるよね?」
ふたりの多々梨が、片方の多々梨に問いかける。
本物の自分のはずの多々梨は、気がついた。
――自分の首には、ネックレスがなかった。
5. 【あとがき】
館山市に帰ってきた多々梨は、以前よりもおしゃべりになり、オカルトには一切興味を示さなくなった。
ただ、近所の人々は時折こう口にする。
「最近のあの子、なんか…目が死んでるのよね…」
― 完 ―
生成メモ
怖あい話GPT2025を使用して生成、プロンプトは『怖い話聞かせて』