【1】黄泉返りの小道

1. 【導入】

千葉県館山市の外れに、「後戻り小道」と呼ばれる山道がある。地元の年寄りたちは、「一度入ったら、帰る時には違う“何か”になってる」と小声で話す。今どきの若者は迷信だと笑い飛ばすが、一年に一度は必ず誰かが行方不明になる場所でもあった。

渡辺多々梨は、いつものように噂話を追いかけていた。アウトドア用のオレンジ色のベストを羽織り、黒いワンピースの裾を押さえながら、彼女は険しい山道に足を踏み入れた。首元の小さな十字架のネックレスが、微かに揺れている。

「後戻り小道、ねぇ…なーんか、そそるじゃん…」

彼女の靴紐の明るい緑が、腐葉土の上で目立っていた。


2. 【異変の始まり】

歩き始めて十五分ほど。森の静寂が、まるで生き物のように耳元にまとわりつく。鳥も、風も、虫の音さえも消えていた。次第に足元の地面が柔らかくなり、まるで泥沼の上を歩いているような感覚に襲われる。

「なんだろ…このぬるっとした感じ…」

突然、背後から「カラカラ…カラカラ…」と小石が転がるような音が聞こえた。振り向いても、誰もいない。

だが、確かに誰かの気配がある。

「誰か…いるの?」

返事はなかった。ただ、茂みの奥で何かが立ち上がるような音がしただけだった。


3. 【迷いの森】

小道を進むほど、景色はねじれていった。木々は逆さに伸び、空は緑に染まり、風の流れが前後に揺れる。コンパスも狂い、スマホのGPSも役に立たない。多々梨の時計は、12時を指したまま止まっていた。

「…ヤバいかも。戻った方がいいかも…」

だが、引き返したはずの道には、見覚えのない鳥居が立っていた。しかも、その鳥居には「黄泉還道(よみがえりのみち)」と、赤い字で掘られていた。

「うっそでしょ…」

多々梨は、鳥居の前で立ち尽くした。


4. 【黄泉返り】

鳥居をくぐった瞬間、世界が反転した。空は黒く、地面は血のように赤い。そこには、見覚えのある人々がいた。昔失踪した同級生、話に聞いたことのある失踪者たち。皆、土色の顔で笑っていた。

「多々梨ちゃーん、こっち来なよぉ…いっしょに暮らそぉ?」

彼らは生きていた頃の姿のままだが、目だけが空っぽだった。

多々梨は必死に逃げ出そうとした。だが、足が地面に縫い付けられたように動かない。ふと、自分の影が動いていることに気づいた。

影の中から、自分とそっくりな“もうひとりの多々梨”が這い出してきた。

「もう、戻れないよ。こっちの方が、楽だよ…」

影の多々梨は微笑みながら、元の多々梨の手を掴んだ。


5. 【終焉】

次の日、地元の登山者が「黄泉還道」の鳥居を見つけたが、その先には何もなかった。ただ、苔むした地面に置かれたひとつのアイテムがあった。

それは、明るい緑色の靴紐がついた黒いスニーカーだった。


― 完 ―

生成メモ

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