【5】クチサケ峠の女

千葉県館山市のはずれにある、とある林道。その奥に続く旧峠道には、「口裂け女が出る」という昔ながらの噂があった。もう舗装も剥がれ、今では誰も通らないような細い道だ。
ある晩、渡辺多々梨はその道を一人で歩いていた。
彼女はオカルト雑誌の読者投稿で見たその「クチサケ峠」に興味を持ち、自ら現地調査に出かけていたのだ。
「まあ、大丈夫っしょ……」と小さくつぶやくが、辺りはもう夕闇に染まり始めていた。
古びた鳥居をくぐったあたりで、風がピタリと止んだ。
虫の音も、葉擦れの音も、まるで封じられたかのように静まり返った。
その瞬間、ふいに後ろから――
「ねえ……わたし、きれい?」
と、女の声がした。
振り向くと、そこに立っていたのは、マスクをつけた女。
古ぼけた赤いコートに、黒髪が乱れ、目元だけが異様に輝いていた。
多々梨は一瞬たじろいだが、慎重に答えた。
「えっと……まあ、きれい……かも?」
女はゆっくりとマスクを下ろした。
そこには、耳まで裂けた口が、にぃっと笑っていた。
「じゃあ……これでも?」
多々梨は息を飲んだ――しかし、彼女の興味は恐怖を上回っていた。
「ちょ、ちょっと待って! 写真撮ってもいい?」
思わずスマホを構える。
その瞬間――
木々の間から、まるで霧のように伸びてきた黒い手が、スマホごと彼女の手首をつかんだ。
「――ダメ。」

後ろから別の“女”が現れた。
顔のない女。
いや、顔がねじれ、正面がどこかわからない女。
「ここで写真を撮った者は……“かえれない”。」
多々梨は叫んだ。けれど声にならない。
身体が動かない。
手首の時計が激しく震えていたが、その時刻はなぜか、午後6時66分を示していた。
そして――
次に彼女が目を覚ましたのは、真夜中の山中。
スマホはなぜか木の上にぶらさがり、ウェストポーチの中は砂だらけ。
そして、口元にだけ、血の跡が残っていた。
帰り道で、通報を受けて駆けつけた地元警察が、山道で見つけたのは――
口が裂けたマスク姿の女性の遺体。
その隣には、十字架のネックレスが転がっていたという。
生成メモ
怖あい話GPT2025を使用して生成、プロンプトは『怖い話聞かせて』