消えない影、廃墟のトースト
俺が一足の古いスニーカーで旅をしていたときのこと。廃墟巡りが趣味でさ、毎回違う場所を探索しているんだ。
ある日、地元の遠く離れた森の中にある古い建物に辿り着いたんだ。かなりの廃墟で、昔はどうやらレストランだったらしいんだけど、もう何十年も使われていない感じさ。
探索を始めてからすぐに、奇妙なことに気づいたんだ。レストランのキッチンエリアに、何故か一つのトーストが置いてあるんだ。しかもそれは新しそうで、まだ温かささえ感じるほどだった。
そのとき、俺の背後に不自然な影が落ちているのに気づいたんだ。でも、振り返ってみても、何もない。ただ、その影だけが、ちょうどトーストを作る動作を繰り返しているんだ。
その瞬間、電話が鳴った。鳴るはずのない電話だ。レストランはとっくに機能を停止しているはずなんだ。でも、それが鳴っていた。
恐怖に震えながら受話器を取ると、向こうからは「トースト、どう?」という声が聞こえてきたんだ。すぐに受話器を置き、スニーカーで全力で走って出て行ったよ。
それから何日も経つけど、その影のことが頭から離れないんだ。何が起きたのか、あのトーストは何なのか、あの影は何者だったのか、答えはわからない。でも一つだけ確かなことは、あの影が消えないことだよ。今でも俺の記憶の中で、トーストを作るその影は動き続けているんだ…
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