【10】江戸いくら奇譚 ~血に染まる丼の夢~
序章:奇妙な郷土料理の噂

「館山の古い民家に“江戸時代のいくら丼”を出す店があるんだってさ」
その話を聞いたのは、渡辺多々梨が地元の郷土資料館でアルバイト中のことだった。年配の男性がぽつりと語ったそれは、冗談にしては語気が重く、どこか怯えているようにも見えた。
「その丼を完食すると……見えるんだと。江戸の亡霊が」
多々梨は好奇心に駆られた。“江戸時代のいくら丼”などという奇怪な食べ物。オカルトの匂いがする。それに――その“丼”を作っていたという家、今でも存在しているらしい。
第一章:消えた村と封印された家
館山市の山奥にひっそりと残る集落跡、「榧ノ木(かやのき)」。地図には載っていないが、古文書に名だけは残っていた。その村には江戸後期、異常に栄えた商家があり、毎晩「赤いご飯」が炊かれていたと伝えられている。
多々梨は小雨の降る中、その廃村を訪れた。黒い長袖ワンピースの上にオレンジ色のベスト、十字架のネックレスを揺らしながら、白いオーバーニーソックスが泥に汚れていく。
道なき道を抜けた先、木々の間にぽっかりと現れた古い日本家屋。入口には朽ちた木札が下がっていた。
「丼匠 榧庵」
扉を押すと、ぎぃ、と音が鳴る。中は埃とカビ、そして――魚の生臭さが漂っていた。
第二章:赤い粒と口の中の幻
奥の厨房に、未だ整然と並べられた調理道具。大釜の中には、異様な赤黒い粒が残っていた。まるでいくら……いや、これは……?
ふと、多々梨は足元の板が軋むのに気付いた。下に隠し部屋があるようだ。
蓋を開け、暗闇の中へと降りると、そこには古びた石の祭壇があった。中央に供えられていたのは、小さな丼。漆塗りの器の中に、ぎっしりと詰まった赤い粒。まるで、まだ新しいかのような輝き。
気がつけば、多々梨はその丼を手に取り、一口運んでいた。
ぷちゅ……
口の中で粒が弾ける。
だが、それはイクラではなかった。舌に広がるのは、鉄のような味。まるで――血。
第三章:江戸の亡霊たち
瞬間、多々梨の目の前に、異様な光景が広がった。江戸の町並み。だがその空は血の色に染まり、人々の顔は無く、代わりにただ口だけが裂けていた。
「食ったか……またひとり……」
背後から声がする。振り返ると、白装束の女が丼を抱えていた。彼女の目は真っ黒で、涙の代わりに赤い粒が零れ落ちていた。
「その丼は、生きた子の眼玉から作られておる」
女は多々梨にゆっくりと近づいてきた。
「榧ノ木の繁栄は、その“いくら”の代償……。お前も、目を差し出せ」
多々梨は腰のポーチから携帯ライトを取り出し、女の顔に向けて照らした。が、そこに女はいなかった。代わりに――目の前に映ったのは、自分自身の姿。
いや、違う。
自分の顔の眼窩には――もう、何も残っていなかった。
終章:丼の中の未来

気がつくと、多々梨は榧庵の床に倒れていた。手に持っていたはずの丼は消え、代わりに掌には赤い粒が三つ、こびりついていた。
「……夢、じゃないよね……」
そう呟く彼女の耳に、小さく鳴る木霊の声。
「次は誰が……目を……」
多々梨の左腕の腕時計が止まっていたのは、午後3時33分。
その時刻は、江戸時代に“いくら丼”が供される儀式の開始時間だったという――。
― 完 ―
生成メモ
怖あい話GPT2025を使用して生成、プロンプトは『江戸時代のいくら丼』
時間帯が悪かったのか画像が全然生成されなかったので、画像は4oImageGenerationで生成。やっぱり全然違うなぁ……というかこれGPTsに導入されるの待たずに次回からもこの方法で画像生成しよう。