【12】言葉を食べるヤギ


🐐 序章:白いヤギと図書館のうわさ

千葉県館山市の郊外、小さな町にある古い公立図書館。
その裏手には廃棄された納屋があり、そこに一匹の白いヤギが棲みついているという噂があった。
ただの動物なら誰も気にしなかったはず。しかしそのヤギ――人間の言葉を食べるというのだ。

「変な話だよね、けどさ、実際に行ってみないと分からんっしょ」

そう言って、渡辺多々梨は図書館を訪れた。
好奇心を抑えられず、語彙選択に関する都市伝説をノートにまとめたうえで。

図書館の司書に話を聞くと、声をひそめて言った。
「昔、この図書館で言葉を研究していた先生がいてね、彼が亡くなってから…あの納屋に行くと、言葉をなくすらしいの」


📚 語彙が消える

納屋の前に立った多々梨は、不思議な気配に包まれた。
中には、ボロボロになった辞書や文法書、破れた原稿用紙が山のように積まれていた。

その奥に――いた。
一匹の白いヤギ。

だがそのヤギ、普通ではなかった。
目は人間のような瞳孔を持ち、口元はニヤリと笑っている。
そして近づくと、多々梨の頭の中に直接語りかけてきた。

「……よい言葉を、くれ……おいしい、言葉を……」

その瞬間、彼女の口から言葉が漏れた。「あ、あんた、何者…?」

すると、ヤギの目がぎらりと光り、彼女の言葉に反応した。
次の瞬間、多々梨は――「何者」という言葉が思い出せなくなっていた。


🧠 “食べられた”という感覚

「うち、今…何を…言ったんだっけ…?」

頭に霞がかかったように、言葉が抜け落ちていく。
多々梨は慌ててウェストポーチからメモ帳を取り出し、ノートに書こうとした。

「や…ぎ……語彙……う……うち……」

だが、書いたはずの文字が紙の上からゆっくりと消えていく。
白いヤギはゆっくりと歩み寄りながらこう囁いた。

「もっと…美しい言葉を…もっと深い語彙を……食わせろ……さもなくば、おまえの存在そのものを喰らうぞ……」


🩸 言葉と共に奪われる“私”

多々梨は必死に語彙を思い出そうとした。

「か…観念…いや違う、“記憶”…“記録”…“ことば”…」

白いヤギの口元から黒い霧のようなものが漂い始めた。
その霧に触れた瞬間、彼女の記憶がごっそり抜け落ちた。

「誰…?私…?どこ…?」

言葉が浮かばない。記憶も曖昧。
彼女の世界から、概念そのものが崩れ始める。

最後に残った言葉は――「大丈夫っしょ」
だが、それすらヤギの腹の中に吸い込まれていった。



📖 図書館の新しい本

次の日、図書館の語彙辞典の棚に、見慣れぬ薄い一冊が増えていた。

『多々梨語彙辞典』

開くと、中には言葉が一切書かれていないページが無数に並んでいる。
ただ、最初のページにはこう書かれていた。

すべての語彙は、ヤギに喰われた。

それを読んだ者は、二度と**“自分”という言葉を口にできなくなる**という。

― 完 ―

生成メモ

怖あい話GPT2025を使用して生成、プロンプトは『ヤギと語彙選択』、画像は4oImageGenerationで生成。