【16】予約条件

千葉県南部の小さな港町、館山市。梅雨の湿気を含んだ空気が、商店街の古びたアーケードを重たく包んでいた。
その一角にある、年季の入ったゲームショップ「ゲームナカヤマ」。看板の塗装は剥げ落ち、シャッターの隙間から見える内装もどこか時代遅れな雰囲気を醸し出している。

ある日の夕方、濡れたアスファルトを歩いてきたのは――渡辺多々梨。
黒いミディ丈ワンピースの上に、アウトドア用のオレンジベストを羽織り、少し泥が跳ねた白いオーバーニーソックスが彼女の慎ましさを際立たせている。
そしてその右隣にいたのは、……頭に皿、背中に甲羅、そしてビニール傘を器用にさして歩く、カッパだった。

「ねえ、ここだよ。Switch2の予約、今日からって貼り紙にあった」

カッパはウキウキとした声で言った。ゲーム好きの河童という珍しい存在だったが、本人はとても真剣だ。

「……まぁ、予約だけならできるんじゃない? 大丈夫っしょ」

と、軽く言う多々梨。

中に入ると、薄暗い店内には誰もいない。天井からは蛍光灯が数本ぶらさがっていたが、そのいくつかは点滅している。
やがて、レジ奥のカーテンがスッと開き、無表情な初老の男が姿を現した。どこか無機質な目をした店主だった。

「……Switch2の予約かね?」

カッパが意気揚々とうなずくと、店主は重たいファイルを開きながら言った。

「うちは独自の予約条件がある。満たしていなければ、受け付けられん」

「え、ええと、いくら払えばいいですか?」

「金じゃない。条件だ」

店主が指さした紙には、こう書かれていた。


《Nintendo Switch2 予約条件》

  1. 現住所が館山市内であること
  2. 週に一度、当店で商品を購入していること
  3. “資格のある者”からの紹介状を持っていること

「え、それ……普通じゃないよね?」多々梨が眉をひそめた。

「資格のある者って……誰?」

カッパが尋ねると、店主はぼそりと答えた。

「それは、以前予約を許された者だけが知っている。だが、もう一人も残っていない」

「おたすけーーッ!」多々梨が思わず叫んだ。

カッパは焦った様子で「なんとかならないんですか!」と食い下がるが、店主は言葉を繰り返す。

「条件が満たされなければ、絶対に無理だ」

そう言った店主の目が一瞬、爬虫類のように縦長の瞳孔に変わったように見えた。

多々梨は背筋に冷たいものを感じ、無言でカッパの腕を掴んだ。

「……帰ろ」

その瞬間、入り口の自動ドアがゆっくりと閉じられた。まるで、二人が出ていくことを拒むように。
外からは、薄暗い夕方の光がわずかに漏れるだけ。中の空気が、まるで水の中のように重たくなっていく。

店主の影が、棚の影にもうひとつ増えていることに、誰も気づいていなかった。

Switch2の予約を許された者は、誰一人帰ってこなかった。
そのことだけが、確かな事実だった。

― 完 ―

生成メモ

怖あい話GPT2025を使用して生成、プロンプトは『河童が新型ゲーム機NintendoSwitch2を予約しようとゲームショップを訪れるが、予約するための条件が満たせておらず追い返される話』

多々梨の口癖の設定を毎回いじりながら生成しているけど、使うべき状況がうまく伝えられず苦戦中。汎用性の高い言葉、それこそ悲鳴に近いような感情を表すだけの言葉の方がいいのか、そうなるとちょっと口癖……キャラ付けという目的に沿わないか。ともあれ『おたすけーーッ!!』はダメだ。