帰り道の追跡者

夕暮れ時、街の喧騒が次第に静まり返る頃、仲良しのミキとアヤは地元のカフェから帰る途中だった。ミキはストローを口にくわえながら、「今日の新メニュー、意外とおいしかったよね!」と活発に話していた。アヤは冷静に、でも微笑みを浮かべて「うん、でもカロリーが気になるわ」と応えた。

二人はいつもの帰り道、街灯がぼんやりと灯る古びた道を歩いていた。だが、この日は何となくその静けさが異常に感じられた。アヤが耳を澄ませると、遠くから金属を地面に打ち付けるような音が聞こえた。

「ミキ、聞こえる?あの音…」

ミキもその音に気づいた様子で、目を細めて道の先を見つめた。と、その先に怪異のおじさんが立っているのが見えた。その手には、光る釘がたくさん打ち込まれたバットを持っていた。

「アヤ、走るよ!」

二人は慌てて走り出した。背後からはおじさんの足音と共に、釘バットがアスファルトを叩く音が聞こえてきた。ショートカットとして使っていた細い路地を曲がり、息を潜めて身を隠した。ミキの顔は青ざめており、アヤの手も震えていた。

おじさんの足音は次第に大きくなり、彼が二人の隠れている場所の前を通り過ぎる。しかし、その足音は途中で止まった。

「こっち見てる…」

ミキが小声で囁いた。すると、おじさんはにっこりと笑いながら、バットを地面に打ち付ける音をさせて、二人の方に近づいてきた。

アヤは勇気を振り絞り、「今すぐ去らないと警察を呼ぶわ!」と叫んだ。

その声に驚いたのか、おじさんはふと立ち止まり、その場からゆっくりと後退していった。そして、闇の中に姿を消した。

二人はしばらく身を震わせながら隠れていたが、確認して周囲が安全であることを確かめ、慌てて家に帰った。

「もう二度とあんな道を通るもんか!」ミキは震える声で言い、アヤも頷いた。

その後、街では「釘バットのおじさん」としてその怪異の噂が立ち、多くの人々が彼を恐れた。ミキとアヤはその日から、常に二人で行動し、他の女子高生たちにも注意を呼び掛けた。

街の中で流れる怖い噂は、人々の心に不安をもたらすが、同時に絆を深める力も持っていることを、ミキとアヤはこの出来事を通じて知ることとなった。

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