パススルーカメラの異界

僕は最新のVRゴーグルを手に入れた。そのゴーグルの特徴は、パススルーカメラによって現実と仮想を融合させる機能だ。友人たちとオンラインで集まり、この新しい体験を試すことにしたんだ。

夜、部屋の電気を消し、ゴーグルを装着。パススルーカメラが現実の部屋を映し出す。僕の部屋が徐々に仮想世界に変わる。この新しい技術に心躍らせていた。

ところが、少し違和感を覚え始めた。パススルーカメラに映る部屋の隅に、時折、ぼんやりと人影が映り込む。最初はソフトウェアのバグかと思った。でも、その影は徐々にはっきりとしてきた。

その影は、謎の人物だった。こちらをじっと見つめ、ゆっくりと近づいてくる。僕はゴーグルを通してしかその人物を認識できなかった。ゴーグルを外しても、そこには誰もいない。でも、ゴーグルをつけると、また彼がいる。

友人たちに聞いても、彼らには何も見えないと言う。ただ一人、僕だけがその人物を見ることができた。彼の存在は、どんどんリアルになっていく。彼は部屋の中を自由に歩き回り、時には僕のすぐ後ろに立つ。

ある日、彼は僕に話しかけてきた。声はない。彼は壁に何かを書き始めた。それは、まるで警告のような言葉… 「彼らが来る」と。

その夜以来、僕の部屋には奇妙なことが頻発するようになった。物が勝手に動く、電気が勝手についたり消えたりする。そして、ゴーグルを通して、彼が指さす方向にはいつも、不気味な影が見えるようになった。

ゴーグルのパススルーカメラが捉える世界は、もはや現実とは異なる何かに変わっていた。僕は、その謎の人物によって、未知の恐怖の世界へと引き込まれていたのだ。

そして、今夜もまた、ゴーグルを通してその世界を覗く。彼が何者なのか、彼の警告が意味することは何なのか、その答えを見つけるまで…。

怖あい話

Posted by tomoaky