消えた遊覧船と花火の謎

その日、私たちは沿岸の小さな町で、大型遊覧船の寄港を祝うために集まっていた。夜空を背景に、華やかな花火が次々と打ち上げられ、町は祭りのような雰囲気に包まれていた。私と友人たちは、船から降りてきた観光客たちと一緒に、その美しい光景を楽しんでいた。

しかし、打ち上げられた花火の一つが、徐々に変わり始めたのだ。最初はただの光の玉だったそれが、徐々に人の顔のような形に変わっていく。最初は誰もその異変に気づかなかった。しかし、その顔が私たちに見覚えのあるものだと気づいた瞬間、私たちは恐怖で凍りついた。

「あれ、なんだ?」友人の一人が小声でつぶやいた。確かに、それは私たちの友人であるはずの彼の顔に似ていた。彼は数時間前に遊覧船に乗っていたはずだ。なぜ彼の顔が、こんなところに?

不気味な花火は次々と打ち上げられ、それぞれが異なる人の顔に変わっていく。静まり返った観衆の中で、私たちはただ立ち尽くすことしかできなかった。

その時、私たちは恐ろしい予感に駆られた。これはただの花火ではない、何かがおかしい。恐怖を押し殺し、私たちは遊覧船へと急ぎ足で向かった。何かが起こっている。それが何であれ、私たちは知る必要があった。

私たちは息を切らせながら遊覧船の桟橋にたどり着いた。船はそこに静かに係留されていたが、甲板には人の気配がまったく感じられなかった。いつもなら賑やかな声や笑い声が聞こえるはずの場所が、不気味な静寂に包まれていた。

「誰かいるのか?」友人の一人が声を上げたが、返事はない。私たちは慎重に船内へと進んだ。照明はついているものの、あたり一面はゴーストタウンのような静けさで、どこにも人の姿は見えなかった。船室を一つ一つ確認しても、乗客や乗員の姿はどこにもなかった。まるで彼らは忽然と消え去ったかのようだった。

「これは一体…」私の声は震えていた。船内には荷物や個人の持ち物がそのまま残されていた。コーヒーカップはまだ温かく、本は開かれたまま。しかし、人はいない。まるで彼らが突然空気に溶け込んでしまったかのようだ。

私たちは船内を探し続けたが、答えは見つからなかった。ただ、一つだけ確かなことは、私たちが見た花火の異変と、この船の乗客の失踪が何らかの関連があるということだった。恐怖と混乱の中、私たちは警察に連絡を取ったが、彼らもこの謎を解くことはできなかった。

その日から、私の心には常に不安と疑問が残った。一体何があったのか? 花火の異変と失踪した乗客たちの関係は? そして、なぜ私たちだけが残されたのか? これらの疑問に答えを見つける日は、今も来ていない。

怖あい話

Posted by tomoaky