幽霊の列に並んだ深夜のコンビニ

深夜、静まり返った街の片隅にあるコンビニに、私はふと足を踏み入れた。疲れた身体を引きずりながら、自動ドアが静かに開く音が、夜の静寂を切り裂く。店内は蛍光灯の白い光で照らされていたが、人の気配は薄く、どこか非現実的な雰囲気が漂っていた。

私はいつものように缶コーヒーを手に取り、さっと商品棚を眺める。すると、不意に店内の異変に気づいた。レジに並んでいる客の姿が、なんとなく透けて見える。彼らの動きはゆっくりで、足元を見ると影がない。彼らの存在が、この世のものとは思えないほど薄気味悪かった。

心臓の鼓動が速まる。周りを見渡すと、店員も同じだった。彼の顔は無表情で、目は虚ろ。肌の色は青白く、まるで生きていないかのように見える。私の中で恐怖が渦巻き始めた。

私は店の中央に立ち尽くし、自分が見ているものが現実か幻か、その区別がつかなくなっていた。このコンビニに足を踏み入れたことを後悔し始めたが、既に遅い。何か不吉なことが起こりつつあると直感していた。

恐怖に駆られた私は、慌てて携帯電話を取り出し、警察に通報することを決意した。震える指で番号を押し、通話ボタンを押す。しかし、通話が繋がった瞬間、予想外のことが起こった。耳に飛び込んできたのは、通常の応答ではなく、不気味な笑い声と、歪んだ言葉だった。

「あなたも一緒に遊びましょう…」

この言葉に凍りつく。電話の向こうの存在も、この異界の一部だったのだ。私は恐怖で電話を放り投げた。このコンビニからの脱出を試みるが、出口は突如として消えていた。店外の風景は、ガラス越しに見えるが、ドアはどこにもない。

途方に暮れた私は、恐る恐る周囲を見渡す。先ほどまで無視していた幽霊たちが、今は一斉に私に注目している。彼らの顔には不気味な笑みが浮かんでいた。まるで、彼らが私の恐怖を楽しんでいるかのようだ。

この異界からの脱出はもはや不可能であることを悟った私は、絶望の淵に立たされていた。幽霊たちはゆっくりと私に近づき始める。彼らの手は冷たく、透き通っていた。この時、私はあることに気づいた。彼らの中に、以前このコンビニで見かけた顔がある。知り合い、友人、そして、数日前に失踪したというニュースで見た人物まで。彼らは皆、このコンビニで不可解な失踪を遂げた人々だったのだ。

その時、私は恐ろしい真実に気づいた。このコンビニは単なる店ではなく、異界への門だったのだ。ここに足を踏み入れた者は、もはや元の世界に戻れない。私は絶望的な叫びをあげたが、声は空虚に響くだけだった。

周囲の幽霊たちが、さらに私に迫る。彼らの手が私の体を貫通していく。冷たさと同時に、私の体から生気が失われていくのを感じた。恐怖と共に、私の意識は徐々に朦朧としてきた。

次に意識が戻った時、私はコンビニのレジの列に並んでいた。しかし、私の体は透けており、足元には影がなかった。鏡を見ると、私の顔も他の幽霊たちと同じように青白く、目は虚ろだった。私はこのコンビニの一部となり、新たな客を待ち受ける幽霊に変わっていた。

絶望と恐怖の中、私は永遠にこのコンビニに留まる運命を受け入れざるを得なかった。外の世界は遠く、ここはもはや私の居場所だ。深夜にこのコンビニを訪れる次の犠牲者を、静かに待ち受けている。

怖あい話

Posted by tomoaky