時計の反対側
昔々、田舎の小さな村に、時計塔が一つありました。その塔には大きな鐘があり、時を刻む音が村全体に響き渡っていました。しかし、その時計塔は神秘的な伝説が残されていました。何人かの村人が語るには、時計の針が逆回りする夜に、死者が現世に戻ってくるという話です。
ある日、その村に新しく引っ越してきた若者・ケンイチが、この伝説を面白がりました。彼は妄想が趣味のちょっと変わった男で、考えてみれば少し興奮していました。そして、ある晩、彼は時計塔へと向かいました。
鐘が12回鳴り、日付が変わる頃、彼は時計塔の下で待ち続けました。そして、予想に反して、彼が見たのは時計の針が逆回りする様子でした。しかし、目の前に現れたのは死者ではなく、遠くから見ると長髪の美しい女性の姿でした。彼女はケンイチに微笑んで、ゆっくりと時計塔へと消えて行きました。
ケンイチはその現象に混乱しながらも、彼女が消えた方向へと足を進めました。塔へと入ると、中には何もなく、ただ彼女の微かな香りが残っていました。
その後、ケンイチは村の人々にその夜のことを話しましたが、誰も彼を信じませんでした。それは当然、彼が言っていた時計が逆回りした時間、全ての村人は深い眠りについていたからです。
しかし、ケンイチは諦めませんでした。そして、彼は村の古老から聞いた、かつてこの村に住んでいた美しい女性の話を思い出しました。彼女は愛する人との約束の日に病で亡くなり、その後、彼女の霊は毎夜時計塔に現れると言われていました。
伝説を確かめるため、彼は毎晩時計塔に通い続けました。そして、ある晩、彼女が再び現れました。しかし、この晩、彼女は以前とは違い、悲しげな顔をしていました。彼女はケンイチに向かって「私はあなたと同じ、生者ではありません」と言いました。
ケンイチは混乱しました。自分は生きているはずだ、と彼は反論しました。しかし、彼女は「だとしたら、なぜあなたは時計の針が逆回りする時間を見ることができるのですか?」と尋ねました。
ケンイチはその場で凍りつきました。彼が見ていた時計の反対側、それは死者だけが見ることができる時間だったのです。そして、彼はその瞬間に理解しました。自分が見ていたのは現世ではなく、彼が実は死んでいて、見ていたのはあの世だという事実を。
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prompt:
叙述トリックを使った怖い話を聞かせて、その話のタイトルも教えて。